昔、目指したい作家さんの画風があって、その絵を描きたくて頑張っていたけれど、どうもうまくいかなくて、いろんな作家さんの絵を真似たことがある。
そのうちに、その絵を描く作家さんには成れない僕が、真似たい絵を完璧に描けるわけがないと気が付いて、その作家さんがどうやってこの絵を描くに至ったのか、その経緯を辿る方法を考えることにしたんだ。
ある作家さんの画集を紐解くと、みたことのある構図や線のタッチ、色の塗りかた、または「これは模写だ」とあからさまに分かるイラストを発見した。
その画集には、作家さんの学生時代のイラストも含まれていた。
この作家さんも、スタートラインは同じ。
ただ、目指したい絵を模写しても、僕は作家さんになれはしないし、あなたにもなれはしない。
作家さんには作家さんの、僕には僕の、あなたにはあなただけの表現がある。
それは、自分自身にしかないもの。
さまざまなものを吸収して、自分というフィルターを通して濾し出されたもの。
それから僕は、模写をやめた。これまで目の当たりにしてきた先人たちの作品を礎にして、僕だけが表現できるものは何かを考えることにした。
もし、あなたが絵を描くことに悩んでいるのなら、絵を目指すきっかけとなった作家さんがどんな経緯で絵を描くようになったのかを、そのルーツを辿るのも、上達の一手になるかもしれない。
素敵な絵をたくさんみてきたよ。
画集もたくさん買ったんだ。
今の僕は、僕らしい絵を描けているから、これからも安心していられる。
描けなくなっても、大丈夫。