スピッツ『春の歌』でカラオケの高得点を出したくてたまらなくて、喉を懸命に響かせた高校時代。
この喉を震わせるのは、僕だけだ。
僕は、歌い手になりたかった。
心傷さえなかったら、もう少し音楽をやれていたのかな。
この声以外、何も持っていないけれど。
今でも思いつきで歌詞を書く。
書いてはどこにも発信することなく、下書きに残してそのままにしている。
世界に言いたいことなんてないんだ。
僕の恣意をどこかへ響かせる必要なんてないから。
ただ、大事にしているものをわざわざ発信する必要なんてなくて、大切なものを大切にしているだけで。
春が今、若葉の指先を伸ばしている。
その指と、ただただ手を繋いでいたい。