7routeplanet

写真と七辻脳内白描図

優しい物語が読みたくて書く

 平気だと思っていたことが、実は平気ではなかったとして、それは僕の問題であるから、他人にはあまり関係がない。

 

 だから、僕が物語を書けなくなったところで誰も困らないし、僕の見えていた世界は僕という『殻』を打ち破ることなく僕ごと消える。

 

 ストーリーは、もう出来上がってしまったから、書き直しなんてしたくない。

 これは、僕のエゴだ。

 「僕のエゴだ」という言葉は、中高生あたりで読んだ物語か何かにあった、ていの良い言い訳だ。

 

 世界は、物語のようにただただ美しくなんてできていない。もっといびつで、みずほらしくて、小さな花のような幸せが咲く。

 読みやすく整った物語が流行るのなら、いびつでも書きたいものを確と刻んだ物語はこれからも人目に触れなくて良い。

 

 優しい物語が読みたい。

 春の広野に一輪だけ咲く、小さな五枚の花びらを揺らす花のような。

 やってきた春風に身を委ねて楚々として咲う花のような。

 

 僕が書かなかったら、きっともう、そんな物語とは出会えないんだ。

 心傷なんて、関係ないだろ。

 書くことができるのが自分だけなら、世界が回って立ち上がれなくても、心臓が早鐘を打って落ち着かなくても、僕が書くしかないんだ。

お久しぶりだね、元気だった?

 久々にブログを読むと、当時の自分とちゃんと出逢えた気がしてほっとする。

 同時に、今の自分が失いつつあるもの、今の自分が平気になってしまったものの擦り合わせが浮かび上がってはっとする。

 

 僕はもう少し、春の花の香りを愛おしむひとだったよ。

 春の花の香りに、高校時代のワンシーンを思い出すひとだ。

 

 それを今、書き留めておきたい。

言い訳しても捗らないよ。

 尊敬していた三人。
 どのひとも私より文章に質があって、心理描写が素敵で、キャラが愛らしくて。
 小説メインの個人サイトを運営していて、何度もイベントに参加していて、文学賞に挑戦していて。

 でも。

「結婚したら、もう創作ができなくなっちゃうから」
「ちょっと今、書けないだけなんです。忙しくて」
「いやー。あたしが書きたかったことはこれで一旦書き出したのでもういいです」

 ねえ。
 自分の創作に言い訳をして、なんになるの?
 貴方の創作なのでしょう?
 貴方はそこで終わるような創作物しか書けないの?

 そんなことはないでしょう。
 結婚したって創作事は続けられます。
 遊んでたって構わないからやめないでください。
 貴方の月の裏側を、私はまだ読んでいない。

 貴方の作品はまだですか。
 次回作は、まだですか。
 貴方の想いのこもった作品は、貴方にしか書けないのに。

 そんなかつての【憤り】を、空想事に変えて覚えておくことにする。