7routeplanet

写真と七辻脳内白描図

スマートフォンの電源を落として過ごした最初の夜の夢

自宅を出て、駅の方角へ向かう道は、高速道路と雑居ビルの谷間。

空は夕暮れの青空を真似て、焼けることはない。

また、今日も何も生み出せないのだと、カメラを片手に歩く。

駅への道から逸れて、廃車両の横たわる荒れ路地を進む。

唯一生きている路線が頭上の線路を喧しく叩いた。

 

もう一度、私は空を見上げる。

暮れなずむ西の空から東に連なるビルの谷間へと色が冷えていく。

 

冷えて掛かる夜の帷。その裂け目から、一番星がひっそり輝く。

その位置なら金星か。カメラを向けて様子を伺う。

しかし、辞めてしまった。撮りたい姿を撮るには何もかもが足りない。

 

道の途中で創作仲間と出会う。

合同オフ会に呼ばれたから行ってくるのだという。

別れの挨拶がわりに右手を振り、創作仲間が立ち去っていく。

今は紙も鉛筆も持っていないし、私は多分、呼ばれて居ないはずだ。

 

再び一人となって歩き進む廃車両の荒れ路地は、私一人の人影が延びる。

一本だけ生きている路線は緩やかに曲がり、山奥へと飲み込まれていく。

乗り物の天井は、空が見えないだろう。

これほどまでに見事な夜の帷を誰も見ていないなど、誠に残念なことだ。

そう思ったかどうかは覚えていない。

ただ、単純な青色として言い表したくない空のグラデーションが、だんだんと藍色を纏って地平線と同化していた。

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