7routeplanet

写真と七辻脳内白描図

彗星ポートレイト

‪ 黒いアジャスターケースから、フラッシュを焚くための粉が次々と打ち上げられて、スペースシャトルの噴射よろしく眩い輝きを放つ。‬
‪ ステージに立つ五人はアジャスターケースを支えながら、満面の笑みを浮かべて打ち上がるそれを見上げている。‬
‪ 僕は撮影を終えた弟からカメラを受け取ると、‬妹を弟に任せ、会場の奥へと移動しているはずの両親を探した。

 会場では誰もが黒光りの一眼レフを抱えている。
 今日はポートレイトの日。人混みは凄まじかったが、会場に持ち込まれた衣装や道具は自由に使っていいとあって、人々は思い思いに写真を撮り、撮られあっていた。

 会場の端まで来ると、ステージの横に彗星を竪に写したポスターが貼られていた。宇宙の藍色に銀色の核と五色の尾を広げた迫力のある彗星は、今すぐにでもポスターから抜けて飛んで行ってしまいそうな気を起こさせる。僕はそれを随分と長く眺めて居た。

 声をかけられて振り向くと、いつのまにか両親が僕を見つけて佇んでいる。
 にこにことする母の右隣で、父は後ろのポスターを指差して、それを背景に、と言ったか言わないか、僕にレンズを向けてカメラを構えた。

 そこで目が覚めてしまった。
 被写体になってあげられなくて申し訳ない。